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2019年11月22日(金)

昼の座談会
【催涙ガスは体にどのような影響を与えるか?】

催涙ガスは体にどのような影響を与えるか?、香港でかかりやすい子供の病気とその予防

本日は、香港の医療と子供の病気の予防についてお話しさせていただきます。しかし、催涙ガスの健康等への影響についてご心配な方も多いと思いますので、予定を変更して催涙ガスについても少しお話しいたします。

催涙ガスの基礎知識

催涙ガスは、第一次世界大戦の際に化学兵器として開発されました。人体への影響が一番大きいのは塩素ガスで、これは人を殺すことを目的としています。その他にも、兵士の力を落とすために、いろいろなものが開発されました。皮膚を火傷のようにしたり、涙を出したり、喉を痛くするものなどがありましたが、第一次世界大戦後は条約によって、催涙ガスは戦争で使わないことになりました。

ところが、暴動や群衆をコントロールする目的では、現在も各国で使用されています。催涙ガスで一番有名なものは、MACE(メイス)です。これは、人体への安全性や後遺症について考えてあります。ほかにも各国でいろいろなものがつくられていますが、香港政府が使っているものは、MACEが中心と聞いています。

催涙ガスは結晶体で、実はガスではありません。ですので、噴射すると地上に落ちるようになっています。ガスのようには広がりません。下に落ちたものは、1週間ぐらいで酸化して効力がなくなります。身近なものに例えると、皆さんが使われている漂白剤は、時間が経つと匂いがなくなりますが、それと同じようなことです。

問題なのは、期限の切れた古いものを使用すること。期限が切れて1年~2年も経つと猛毒に変化します。ですので、古いものは大変危険ですが、香港のように立派な政府は使わないと思います。

催涙ガスから身を守る方法

催涙ガスは分子が大きいので、普通のマスクでも防ぐことができます。ところが分子が安定しているので、マスクに付いたものは時間が経っても変わりません。ですので、マスクを外したあとも触わらないように注意してください。でも、一番大事なことは催涙ガスを避けることです。とにかく近づかないようにしましょう。催涙ガスが撒かれていたらもちろん、何かおかしいなと感じたら近づかないことが大事です。万一、催涙ガスを浴びてしまったら、こすらないようにすること。そして、その場をすぐに離れましょう。

ロンドン医療センター香港診断所院長 伊原鉄二郎氏
ロンドン医療センター香港診断所院長
伊原鉄二郎氏

その後の対応については、いろいろな意見がありますが、基本は水で洗ってください。お湯はだめです。お湯で洗うと毛穴が開いて体内に入ってしまいます。水で毛穴を収縮しながら洗い流してください。目は片方ずつ洗います。両目を同時に洗うと、片方の目に付着したものが、もう片方の目に入ってしまいます。水を流しながら片方の目を洗ってから拭いて、そしてもう片方の目を洗うようにします。喉はよくうがいをしましょう。体は水シャワーで流しますが、石鹸を使ってはいけません。油分を溶かすような成分が含まれていると、変化する可能性がありますので危険です。必ず水だけで洗い流すことが大事です。洋服にも催涙ガスが付いていますので、中性洗剤で洗ってください。

後遺症は、基本的に体質によります。イランのケースでは、喘息の方の7%が喘息を引き起こして入院したと言われています。また、皮膚の弱い方は皮膚炎を起こす可能性があります。ただ、致死に至るかというと、普通はないと考えられます。ただし、どんな薬でもごくまれに反応する方がいます。アトピーの方、薬物のアレルギーがある方、プールの塩素にアレルギーがある方は必ず医師に診せましょう。

催涙ガスが広がる範囲は狭く、結晶体なので目に見えます。ガスの雲がなければ大丈夫ですが、お子さんには注意してください。特に小さいお子さんは、催涙ガスが付いたものを口に入れてしまう危険があります。催涙ガスが使用された場所へお子さんを連れて行くのは、1週間は避けたほうが良いでしょう。

香港の空気は安全か

先ほどお話ししたように、催涙ガスは噴射後地上に落ちますので、大気が汚染されることはありません。しかし、結論から申し上げると、別の理由で香港の空気は良くありません。喘息や気管支炎、アレルギーのある方は特に注意が必要です。

香港は海側にありますから、風向きで空気の状況はまったく変わります。私はスマホアプリを使って大気汚染の状況をチェックしています。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、AirVisual(エアビジュアル)というアプリです。これより情報が詳細なアプリもありますが、細かすぎるのでこれぐらいが良いと思います。

これを見ていただくと、この付近の数字が現在86となっています。今は良い方ですね。1時間ぐらい前は115まで上がっていました。冬になると風向きが北向きになります。そうすると中国からの風が入ってきます。また、西から吹くのも中国からの風です。その場合は数字が150~200に上がります。現在、温帯低気圧が接近しています。風向きによっては中国全土の悪い風が吹いてきますので、数字が200を超えることもあります。この世界のランキングを見たいただいたとおり、中国全土は赤になっています。

私も初めはこのアプリを信じていませんでした。ところが、喘息や気管支炎の患者さんを追跡した結果、今はこのアプリで汚染状況をチェックしています。このアプリで数字が100を超えたら注意が必要です。特にお子さんにはマスクをさせましょう。私はPM2.5を99%シャットアウトするマスクを使っていますが、基本的に50%シャットアウトできるものなら十分です。

Q&A Q. もし、催涙ガスのかかった食品を食べたらどうなりますか?

基本的には、催涙ガスは体に吸収されませんので大丈夫です。ただし、口の周りや皮膚に付いている場合がありますので、水でよく洗い流してください。

Q. 催涙ガスを浴びてもがんになりませんか?

ならないということになっています。

Q. ニュースで鳥が死んでいると報道されていますが?

これはよくわかりませんが、おそらく量の問題ではないでしょうか。

Q. 妊婦への影響はありますか?

妊婦さんの場合は、診察を受けたほうが良いです。特に12週までは胎児の細部がつくられる大切な時期です。

Q. もし、催涙ガスの古いものが使用されていたらどうなりますか?

その場合は死者が出ますのでわかります。今のところ心配はありません。

Q. 涙目とじんましんになったのですが、催涙ガスの影響でしょうか?

それは考えにくいです。おそらくウイルス性疾患の症状でしょう。

【香港でかかりやすい子供の病気とその予防】

香港の医療事情をお話をして下さいました
香港の医療事情をお話をして下さいました

香港と日本の医療の違い

香港の医療システムは、イギリスの植民地時代のシステムが変化したもので基本的には皆民です。つまり、皆さんが医療を受けることができます。ところがお金かかります。治療は1日1回。入院でも、診察を受けても1回あたりおよそ170香港ドルです。頭の手術をしても、1日入院しても、風邪で通院しても同じです。お薬は4日分しか出しません。4日で治らなければ、もう一度通院する必要があります。

日本の医療は、1958年に皆民に変わりました。国民であれば誰でも病院にかかれます。日本では、いつでも、誰でも、何回でもが基本ですから、同じ風邪で何回病院に行っても良い。どこの医者に行っても良いです。同じ日に4回行っても大丈夫です。

イギリスではそれはできません。まず医者を決めなければなりません。香港はその折衷となっています。どこの医者へも行けますが、アポイントメントの難しさがあります。香港では医者の数が少ないため、病院は混んでおり、待つことがあります。医事行為は、まず自分と家族ですることが基本です。それでも手に負えない場合に病院へ行きます。

香港の病院システム

香港でおすすめの病院は3つです。香港島側はイースタンホスピタルとクイーンメアリー、島の向こう側はクイーン・エリザベス病院。これが3つの大きな病院です。そこのエマージェンシーに行きます。

香港の病院は日本とは違う部分があります。まず、日本では自分で科を選んで行かなくてはいけませんが、香港では全科診ます。救急車に乗った場合、日本では受け入れ先の病院の都合で、たらい回しになることがあります。香港ではそれはありません。ただし、緊急性が無い場合は待たなければなりません。

香港の医療の質は悪くありません。まったく医療に問題はありません。ただし、国費治療ですので治療に縛りがあります。ですから、「この治療にはお金がかかりますよ」、「この薬は買ってください」と言われることがあります。

必ず揃えておきたい常備薬

これからご紹介する4つのお薬は必ず揃えておきましょう。ひとつずつご説明します。

・PARACETAMOL

これは鎮痛・解熱剤です。大人の場合は500㎎1錠を4時間おきに飲んでください。

・CHLORPHENIRAMINE

これは抗ヒスタミン剤で鼻・咳・かゆみ・くしゃみ等をとります。さらに、じんましんや、かゆいときにも使えます。大人は4㎎1錠を大体6時間~8時間おきに飲みます。お子さんは、6歳~12歳までは半分、2歳~6歳までは4分の1、そして2歳以下は8分の1です。3ヶ月以下の場合は医師と相談してください。

・ORAL REHYDRATION SALTS

これはお腹のお薬です。ポカリスエットと比べると効果は10倍ぐらいあります。でも、あまりおいしくありません。水で溶いていただくと血清と同じバランスのイオン水になります。どんなに腸管がただれていても吸収できるので、腸管の壁を元に戻してくれます。吐いたら6時間、下痢の場合は24時間、これで頑張ってください。もし、出血性の下痢や転げまわって痛がるような場合は、病院に電話してください。簡単なウイルス性の腸管炎、または食あたりなどは、このイオン水を使うことにより大体24時間で治ります。

お腹が悪くなるというのは、ウイルス性の原因でも、食べた物が悪かったとしても、基本的に腸の壁が炎症をおこし擦り傷のようになってしまうので痛いのですね。それを治すには休めるしかありません。休ませるときに脱水になってはいけないので、これで水分を摂るということです。

お腹の痛みで一番気になるのは、ぴょんぴょん跳ねさせても跳ねられない。これは腸の内側の炎症が外の壁まで広がっている。ということは穴が開く寸前なのです。その場合は緊急で治療する必要があります。盲腸もはじめは真ん中の痛みで、時間の経過で痛みが右側に寄っていくのは、盲腸の外側の壁が炎症を起こして、右側の腹壁が擦れるから右側が痛くなります。その頃になるともう歩けません。

ウイルス性の疾患というのは、大体全治まで3日半かかります。白血球がウイルスを勉強して、それを殺すための抗体をつくります。それに3日かかるのです。そのため、3日程度熱が上がったり下がったりしますが、それに対する薬はヘルペス・インフルエンザ以外にはありません。ですから、寝ているしかない。私どもが心配するのは4日連続で熱が下がらない場合。これはとても心配します。その場合は肺炎や何かほかの二次感染があります。

そうでなければ、熱発3日まではお母さんにこれらの薬で頑張っていただく。お母さんは毎日お子さんを見ていますから、お母さんが怖いと感じたら病気なのです。熱があってもこの子は大丈夫とわかるでしょう? もし、おかしい、怖いと感じたら病院へ来てください。

・GAVISCON

これは大人用の胃酸を中和するお薬です。お母さんが生理のときにムカムカする、お父さんが飲み過ぎたという場合に飲みます。食後30分と夜寝る前に10㏄ずつ1日4回飲んでください。なぜ食後30分かというと、胃の中でご飯が沈んだ頃に、このお薬が胃と食べ物の間に膜をつくってただれた胃を守ります。大体3日で効いてきます。お酒もやめて乳製品もやめてこの薬で頑張ります。5日以上続けても治らない胃炎は医者の問題です。

この4つは必ず買い置きしておいてください。これらの薬を常備していると、ロンドン医療センターの40年の歴史上、92%は医療センターへ来る必要はありません。残りの8%は、こちらから救急車をお呼びするか、指定する病院へ行っていただくことになります。

常備薬も実物付きで説明して下さいました
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貴重なお話をありがとうございました
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