2018年12月21日(金)
昼の座談会
【私にも作れる!香港の家庭料理(旧正月編)】
今日は4つ紹介したいと思います。実は明日、香港人にとってすごく大事な行事である冬至があります。冬至でもこういったお料理を食べます。人が集まるときだけでなく普段食べても構わないお料理なので機会があればトライしてみてください。
ケチャップ蝦 鴻運笑哈哈 レシピ動画1つ目の蝦のお料理ですが、ケチャップとウスターソースを使います。香港で売っているウスターソースで作るとより香港らしい味になります。茶色い瓶でオレンジ色のラベルが付いている、どこのスーパーにでも売っているもので20ドルぐらいです。英語で「WORCESTERSHIRE SAUCE」と書いてありますので探してみてください。
蝦はどんな蝦でも構いません。香港では街市(市場)に生きた蝦が何種類かあります。ブラックタイガーでも良いですが、今回は海中蝦というのを使いました。お正月や冬至の前になるとみんな御馳走を作るので、こういう良い食材がたくさん市場に出てきます。良さそうな蝦があったら「これ」と言えば大丈夫です。冷凍でも構いません。
気を付けていただきたいのは、生の蝦を調理するときです。私は手袋をしないでやっていますが、刺さると寄生虫が入って亡くなったりしますので怖いです。手袋をすることをお薦めします。蝦だけじゃなく海鮮全般です。貝は刺さることはないでしょうが、手に傷があると思わぬことになるので、手袋をしたほうが良いです。薄いものではなく食器洗いで使うようなものをお薦めします。
香港の人は先に足やひげをはさみで切ってから調理をします。香港のお料理は骨付き、殻付きが多く、このお料理も殻付きのまま調理しています。背のほうに包丁を入れて、焼くときに頭を押し付けるようにして蝦のみそがたれに出てくるようにします。ニンニクと生姜を先に炒めるのがポイントです。
講師の今寿美子さん
蝦のお料理で使っていただきたいのは、セロリの葉っぱのような「カンチョイ」で、「芹菜」と書きます。すごくセロリに似ています。香りがとっても良いです。1本2~3ドルぐらいでしょうか。私のレシピでは最後にトッピングとして散らしていますが、葉っぱはトッピング用に残して、茎をネギのようにニンニク、生姜と一緒に炒めると、すごく香港っぽい香りになります。
セロリで代用したこともありますが、こちらのほうが美味しいです。セロリやイタリアンパセリの代わりにも使えます。手に入りやすいので、そういった洒落たものが売っていないときは、中華でない料理にも私は応用しています。ローカルスーパーにも売っていますが、ラップに包まれてしなしなになっていることがありますので、外資スーパーのほうが良いと思います。
中華の蝦料理というとエビチリソースを思い浮かべますが、香港の人はエビチリソースを食べません。こういう殻付きのものを、口を汚しながら食べるのが香港流です。
なぜ蝦がおもてなし料理として好まれるかというと、蝦というのは広東語で「ハー」と言いますが、「ハーハーシウ」と言って笑顔をもたらすとされています。料理名に使われている「哈哈」は「ハーハー」と発音しますので、それと合わせて「笑顔が増える」という意味になります。日本では腰が曲がるまでと長寿を願っておせち料理に入っていますが、香港は違う意味で音からめでたいことを連想させるお料理が好まれます。
つみれと蓮根の挟み焼き 年年有餘(烤蓮藕魚餅) レシピ動画次は蓮根のお料理です。香港では蓮根が1年中あります。買いやすくて私もいろいろな料理に使います。魚のつみれも山積みにして量り売りしています。ネギ入りとネギなしがあります。この魚のつみれはすごく便利で、自分で作らなくてもつみれ状になっていて値段も安い。20ドルで4人前ぐらいです。それを蓮根に挟んで焼くだけです。もし好きでしたらカンチョイを散らしても合いますが、今回はネギを使っています。これは簡単にいつでも作れる料理です。
なぜ縁起が良いかというと、蓮根を広東語で「リンガウ」と言うのですが、料理名に付いている「年年」と同じ発音なのです。魚の発音「ユウ」はお金が入るという意味の発音と一緒なので「毎年お金が入るように」ということです。蓮根と魚を組み合わせたお料理で、ものすごく簡単でおすすめです。挟むのが面倒なときは、フライパンに油を引いて生姜の香りを出してから押し付けて大きなハンバーグ状にしっかり焼くだけでも大丈夫です。切って醤油を付けて食べるとさつま揚げのような感じになります。おつまみにもお薦めです。
香港は高温多湿なのでつみれは傷みやすく、できれば近くの街市(市場)で買ったほうが良いです。私も普段はスーパーで買い物をすることが多く、1か所でいろいろなものが手に入るので便利ですが、よく見ないと日にちが過ぎたものもたまに売っています。高温多湿ということもありますので鮮度にも注意してください。日本とは鮮度の落ちやすさも違います。よく観察することが一番です。香港は自己責任で日本のようにクオリティーも整っているわけではありません。自分の目で確かめて買ってください。
牡蠣ともずくのバター焼き 發財好市(海髮菜拌牛油蠔豉) レシピ動画もずくと牡蠣のお料理です。実は本当は香港ではもずくではなくて乾燥した黒いものを戻して使うのですが、私はぼそぼそしているので苦手です。これは香港の伝統的な料理ではなく、西湾河(サイワンホー)の道の駅(2019年6月閉店)で、沖縄のもずくを自分で食べたくて買ったもので代用して作ってみました。牡蠣はスーパーで広島の牡蠣が冷凍で売っているのでバター味にしました。これはフュージョンですが、結婚式などでこういう感じのお料理が出ます。黒くて髪の毛みたいなものです。
どうしてこれが好まれるかというと、この黒いものは「ファッチョイ」といって「髪菜」と書くのですが、お金が儲かるという意味で春節の挨拶でも使われている言葉と同じ発音なのです。牡蠣は「ホウシー」といって良いことがあるという言葉と発音が同じなので「お金が儲かって良いことがあるよ」というお料理です(笑)。これも宴会メニューのご馳走として出されます。
豚タン蓮根スープ 年有大利湯(蓮藕豬脷湯)スープは普段15分ぐらいで作れるものを紹介していますが、こちらは時間がかかります。広東料理の特徴の1つで「老火湯」というのがあります。時間をかけて漢方食材と一緒に煮込んだスープです。「老火」というのは長い時間という意味で、これは中国の他の地区と違う特徴です。他の地区は煮込むスープではありませんが、香港では2~3時間煮出します。薬膳なので時間がかかります。豚の舌がグロテスクかも知れませんね。あとは蓮の実と、前の日から戻した椎茸と棗です。棗は必ず種を取ってから使わないと体に熱気が溜まります。味付けは塩だけです。
なぜ縁起が良いかというと、豚の舌は「ジュウレイ」といって利益の「利」と同じ発音なのです。だから利益をもたらすということです。先ほど言いましたが、蓮根は「年年」という意味なので、「年々利益をもたらすスープ」となります。お金ばっかりですね(笑)。香港は家賃も高くてお金がないと生活していけないので、まずお金を得るという意味が料理に込められています。
座談会の様子
作りやすいお料理を教えて下さいました
夜の講演会・交流会
【香港人のための日系企業でのキャリアアップ】
中学2年生まで香港、その後8年間はオーストラリアとカナダで生活して、2003年に日本に留学しました。4年間神戸に住んだことがあります。2007年10月に家族の世話をするために香港に帰国してからずっと日系企業で勤務しています。
時計メーカーのセイコーさんでデザイナーとして3年間ぐらい務めさせていただきましたが、香港事務所がクローズとなったので、2011年6月にコンシェルジュに入社しました。2013年に営業部長、2015年に代表代理になり、当時は代表が不在でしたので、私が営業をやりながら人事やコストを見ていました。そして2016年9月に代表取締役社長に就任しました。
うちの会社では「コンシェルジュ」と「needs」という2つの媒体を作っています。「コンシェルジュ」は日本の方に香港の情報を発信するフリーペーパーで、一方「needs」は日本の文化や観光などの情報を香港の方に広東語で発信しています。
日系企業のイメージを聞くと、「給料が安い」「ガラスの天井(将来性がない)」「ストレスの高さと給料が一致しない」「残業が多い」「融通が利かない(頑固)」「仕事のプロセスにこだわりすぎる」「多くのやり方は日本のやり方のままで、ローカルの実情に合っていない」などが出てきました。それぞれのポイントについて説明させていただきます。
「給料が安い」ということについては、全体的に欧米の企業より安いかも知れませんが、最近はどんどん給料が上がっています。給料だけでなく福利厚生も良くなっています。例えば有給休暇の日数は、うちの会社も7日~14日でしたが、今は14日~21日です。
「ガラスの天井(将来性がない)」ということについては、最近ではローカル化している日系企業も増えてきて、私のように営業マンから代表取締役社長になれますので、頑張れば社長になれる可能性は十分あると思います。
「ストレスの高さと給料が一致しない」ということについては、どんな仕事でもストレスはありますので、どうやって解消するかが大事です。私の場合はジムへ行ったり、旅行に行って温泉に入ったりして解消しています。もちろん給料は重要です。しかし、仕事のやりがいや社会に貢献できるかなども重要だと思います。仕事の量が増えればストレスも増えるでしょうが、給料も増えると思いますので頑張ってください。
「残業が多い」というのは業種によりますが、うちの会社も原稿締切日は残業です。欧米の会社は定時で帰ってハッピーアワーに行ったり、家で料理を作ったりできますが、アジアの会社では全体的に残業が多少あると考えたほうが良いと思います。
「融通が利かない(頑固)」というのは、「ルールを守るのが大事」という意識が香港人より頑固なのかも知れません。「なぜ、もっと柔軟にやらないのか」と疑問を持っていましたが、代表になってみると「ルールが大事」だと実感しました(笑)
「仕事のプロセスにこだわりすぎる」というのは、日本の良さともいえますが、ここは香港です。日系企業のトップも徐々にローカル化しているし、長く香港でビジネスしたいと考えていらっしゃると思いますので、提案すれば自分のキャリアにも会社の成長にもつながると思います。
「多くのやり方は日本のやり方のままで、ローカルの実情に合っていない」というのは、初めて香港に来た方は実情が分からなくて当然だと思います。香港人は、「日本人に提案するのは意味がない」と思っているかも知れませんが、提案すれば会社はローカルの実情が分かるし、自分の知識も会社の中での評判も良くなると思います。
ここまでは日系企業のイメージについて説明させていただきました。次にどうしたら日系企業でキャリアアップできるかを簡単に説明させていただきます。まず日系企業の良いところを探しましょう。例えば、「おもてなし」や「報連相」などがあります。
「報連相」はとても大事です。日系企業というより日本人の方の良いところではないでしょうか。香港人は問題を自分で解決し、あまり報告しません。そういうところは良くないと思います。学生さんも先生に報告、連絡、相談すると自分ができないことでも先生の助けで解決できるかも知れません。
「おもてなし」は、日本のデパートやお店で日本の方のサービスを見ると「ぜひこのサービスを香港に持って帰りたい」と思います(笑)。香港の旅行やサービスに関する全体的なクオリティがアップすると思います。日系企業や日本人の方の良いところを探して勉強すると、自分も成長できて香港企業にも貢献できると思います。
講師のドミニクさん
日系企業での上司、先輩との付き合い方についてお話します。日系企業では上司が部下を食事やハッピーアワーに誘うことがよくあります。香港人は基本的に仕事とプライベートを分けていて、仕事が終われば会社との付き合いはほとんどありません。それはそれで良いと思いますが、もしこれからキャリアアップして長く日系企業で仕事したい場合は、基本的な付き合いは必要だと思います。
個人的な経験ですが、前の代表が3ヶ月に1回香港に来るとよく食事に誘われました。最初は断っていましたが、1度付き合ったら、2度、3度と続き、食事だけではなく週末のジョギングやジムにも誘われるようになりました。そのうちメリットに気づきました。裏話ではないですが、他の人に言えないプロジェクトの話などを食事やジョギングしながら教えてもらったこともあります。今は誘われたら必ず行きますし、逆に私が東京へ行ったときは上司を誘ってジョギングなどをします。
残業の対応についてお話します。入社したばかりのころ、代表がオフィスにいるとなかなか帰れなくて、会議室に行った隙にさっと帰ったりしました。無理して残るのも意味がないので、きちんと上司に「仕事が終わりました。何か手伝えることがなければ先に帰ります」と基本的なマナーをキープすることが大事です。
講演会の様子
学生の方向けに日系企業のトップの方が見ているポイントを簡単に説明します。まず服装です。業種にもよりますが、基本的にビジネススーツが無難だと思います。デザイナーや編集などのクリエイティブな仕事なら、多少カジュアルな服装や自分の個性を表す服装でも大丈夫だと思いますが、ファーストインプレッションが非常に大事です。
基本中の基本ですが、時間を守ることが大事です。もちろん遅刻はダメですが、早すぎるのも困ります。面接のときは10分前ぐらいに到着すれば良いでしょう。もし遅刻しそうなときは理由とどれぐらい遅刻しそうなのかを伝えたほうが良いと思います。そして到着したらまず謝ることが大事です。
会社のことをよく勉強しましょう。どういう仕事をしているのか、最近の動きや新しい商品、代表の方の名前が分かればファイスブックで検索して、最近行ったイベントやどういうことを話しているかなど、いろいろな話の中でアピールするとポイントも高くなると思います。
基本のマナーも大事です。筆記用具を持参する、名刺は立って両手でいただく、相手の目を見て話すなど、特に日本人の方は細かいところを非常によく見ています。
最後になりますが、日系企業と他の国の企業とではルールや仕事のやり方が、大幅に違うと考えたほうが良いと思います。悪いところばかりでなく良いところもたくさんありますので、しっかり見てください。相手の気持ちを理解して相手の立場で考えることが大事です。